學名ヘリアンツスチュベロスス

【蔬菜の研究】趣味と實用
著者:喜田 茂一郎
発行:大正14年(1925年)3月20日

大正時代に野菜に関する栽培・研究
普及活動していた農学研究者
明治末期から大正期にかけて、西洋野菜の普及が
日本で進んでいた時期。

こちらの書籍のP311~314
(第1~第3)に菊芋の来歴、
世界各地の名称、成分や用途などが
記載してあります。2部に分けて
ご紹介させていただきます

第九節 菊芋 キクイモ
學名 Helianthus tuberosus. L. 菊科
(ヘリアンツス チユベロスヽ)

<第一>
來歴、英國の起原、米國
(引用箇所:P311~313)

菊芋は、現今、歐米諸國に於て、蔬菜とし、
或は、家畜殊に、豚の飼料として盛に栽培
せられ、重要なる作物の一となれり。然れ
ども、其の起原は極めて新しく、一六一六年
に始めて發表せられて以來、漸く歐洲の植物
學者の、注目するに至りしに過ぎざるなり。
但し、此より先き、Columna(コルムナ)氏が
伊國Fanese(ファネーセ)牧師の庭園にて、
始めて之を發見したるも、Aster屬のものと
して記載したりしが、後其の菊芋なることを
知りたりと。又當時他の植物學者は、本種は、
ブラジル、加奈太、合衆國等の如き、亞米利加
一帯の地方より傳はりたる事を説けり。英國
へは、米國發見後、間もなく導かれたるも、
其の用途を知らざりし故、多く繁殖せざりき。
然るに、其後、英のParkinson(パーキンソン)
氏が、北米の植物を調査したる際、之を加奈太
に發見し、一六二九年に始めてJerusalem
Artichoke(ゼルサレム アーチチョーク)の
名稱の下に發表し、又、一六〇三年に
Champlain(シャムプレーン)氏は、加奈太の
NewEnglandの土人が、之を栽培し、菜用に
供しつヽあるを發見し、後、佛國の
Lescarbot(レーカーボー)氏は、之を有望なる
作物として本國に持ち歸り、Topinambour
(トピナンボール)の名稱の下に販賣せりと。
斯の如く、次第に菊芋の重要なる所以を明にし、
英國にても、漸次菜用として注目せられ、
一六一七年Hampshire(ハンブシャー)州の
Goodyear(グッドイアー)氏は、倫敦の知人
より二個を讓り受け、直に栽培に着手し、
一六二一年迄には、同州に供給するに足る丈、
多量に繁殖し、JerusalemArtichokeの名の下に
弘布せりと。其の後印度に傳り、Hindustan
(ヒンダスタン)、及び、Bengal(ベンガル)
地方に大いに、繁殖せりと云ふ。

右の如く菊芋は歐洲大陸にて、旣に十七世紀頃
より注目せられ居たりしに拘らず、却つて其の
原産地なる、米國にては、二百五十年間も等閑
に附したりしことは、不思議に堪へざるなり。
米國にて、始めて、之を研究したるは、
一八五五年に、AsaGray(アサグレー)博士が、
或地方より細長き一種の菊芋を受取り、之に
HelianthusDoronicoides,Lamk(ヘリアンツス
ドロニコイデス)の名を附し、豚の飼料に適當
なることを發表せしに始まる。而して之を
Cambridge(ケンブリッヂ)植物園に
試作したるに、三年後に、肥大なる芋を生じ、
之を調理するに、肉質は稍粗なるも、
風味は菊芋に酷似せり。
故に同氏は、之を、菊芋の原種ならんと
説けり。然るに其の後、他の植物學者の研究に
據れば、H.Doronicoides(ドロニコイデス)種
は全く菊芋と異り、葉は、葉柄なく橢圓にして、
鈍鋸齒を有し、花瓣は廣く、果は球形なり。故に
Gray氏の始めて得たるものは、恐らく、菊芋の
野生品なりしならんと。要するに、菊芋は
加奈太の湖水地方、殊に、Saskatchewan
(サスカツチユアン)の如き、西北部に原産し、
其れより、Arkansas(アーカンサス)州の
南部、及び、Georgia州の中央地方に傳播し、
後、歐洲に導かれしならん。本邦へは、文久
元年(二五二一年)外人が、横濱に齎らし
たるを始めとすと。然れども其の後殆ど
食用として栽培するものなく、唯、牧場等
にて、繁殖しつヽあるに過ぎるなり。

<第二>
名稱

菊科に屬する植物にして、其の芋、發達
せる故に菊芋と云ふ。又英名を
JerusalemArtichoke
(ゼルサレム アーチチョーク)となす。
Jerusalemとは、小亞細亞の地名を示し
たるに非ずして、伊太利語のGirasole
(ヂラソール)、即ち向日葵を意味す。
其の花、向日葵に似たればなり。又
Artichokeは朝鮮薊にして、薯の風味が、
之に似たる故ならん。

菊芋は北米原産で、先住民の食用作物として
食されていましたが、1616年頃から徐々に
ヨーロッパへ広まり、日本へ導入されたのは
江戸末期頃と言われてます。
この書籍から菊芋の伝播ルートがわかります🧐
菊芋の名称ですが海外の呼び方が
おしゃれで可愛く感じます💫

ごきげんよう👋

※出典閲覧
「味の素食の文化センター」

日本菊芋協会
キクイモニスト
菊子/犬凛
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